白雲母 muscovite KAl2(AlSi3O10)(OH,F)2 [戻る

単斜晶系  二軸性(−)2Vx=30〜47° α=1.552〜1.574 β= 1.582〜1.610 γ=1.587〜1.616 γ-α=0.036〜0.049
※平行ニコルでは無色で目立たず,クロスニコルでの観察で鮮やかな干渉色により認められることが多い。

色・多色性/通常は無色。多色性なし。

双晶/偏光顕微鏡では認めらない。

形態/板状の形態でそれの断面が1方向に伸びたように見えることが多く,伸び方向にへき開が発達する。
へき開/1方向(板状の面)にきわめて完全。
消光角/へき開・伸び方向に対し直消光。
伸長/正


累帯構造/見られない。時にNa⇔K,Al・Al⇔(Fe,Mg)・Siの部分的置換による累帯構造があるが,光学的には変わりなく,偏光顕微鏡下で累帯構造は認められない。

産状他鉱物の成分との反応関係により約600℃以上の高温では不安定な傾向がある(例:石英+白雲母→アルカリ長石+ケイ線石+水)。

・火成岩中にはマグマから固結した初生鉱物としてはまれ(白雲母を多く含む花こう岩は厳密に火成岩であるか否か不明)。なお,火山岩には初生鉱物としては全く認められない。

・堆積岩中では砂岩・泥岩の続成作用で自生鉱物として生じる場合が多く,砂岩では砂の粒間に細片状集合体をなし,泥岩では時代の古いスレートなどと呼ばれるものに層理に沿った小片状集合体をなす。

・変成岩では高圧型の各種の結晶片岩中に多く,やや低温の片麻岩にも多く含まれる。白雲母が豊富に含まれる変成岩は泥岩・砂岩などのAlに富む原岩から変成したものが多い。結晶片岩中のものはAl・Al⇔(Fe,Mg)・Siの置換が進んだフェンジャイトと呼ばれるものが多く肉眼ではベージュ色。また,6配位のAlの代わりに少量のCrを含み淡緑〜無色の多色性を示すものはクロム雲母(fuchsite)といい,蛇紋岩やかんらん岩に近い部分の結晶片岩中に産する。そのほか,コランダム・菫青石・Al2SiO5鉱物の周囲や割れ目に沿い後退変成鉱物として細粒集合体をなす場合も多い(セリサイト)。

・そのほか,気成作用で多量に生じ,錫・タングステンの気成鉱床では特にFに富む白雲母が多産し,それは少量のLiを含む場合も少なくない(チンワルド雲母やリチア雲母とは光学的に区別困難)。


砂岩中の白雲母(クロスニコル)
続成作用で,堆積物から溶け出した成分が砂の粒子の隙間に沈着してできた白雲母。このように堆積物中に続成作用できた鉱物を自生鉱物という。


泥岩(粘板岩)中の白雲母
クロスニコルで灰〜白色の干渉色を示す粒子はおおむね石英で若干の長石類も含まれる。黄色以上の干渉色を示す短冊状のものが白雲母で,これはもとの泥の粒子の長石類の分解でその成分が白雲母(自生鉱物)となったもの。その白雲母の並びは堆積面に平行で,それに沿って粘板岩としての剥離性が生じ,その剥離面は微細な白雲母のへき開面に起因する鈍い光沢がある。


結晶片岩中の白雲母
Ms:白雲母,Qz+Fs:石英と長石類,St:十字石

白雲母は変成温度が約600℃程度までの広域変成岩に見られ,特に泥岩・砂岩・チャートから変化した黒色片岩・ケイ質片岩・紅れん石片岩・白雲母片岩に豊富に含まれる。板状結晶が1方向に並び,片理を形成し,結晶は湾曲していることも多い。Al・Al→(Fe,Mg)・Siの置換体のフェンジャイトと呼ばれるものも多い(光学的には同じ)。変成度がやや高くなると十字石・アルマンディン・藍晶石と共生するようになる。なお,K→Na置換体はソーダ雲母で苦鉄質の結晶片岩に産し,白雲母と光学的に同じでそれはX線粉末回折で区別する。



紅柱石の変質で生じた白雲母(泥質ホルンフェルス中)
Ms:白雲母,Ad:紅柱石,Qz:石英,Bt:黒雲母
泥岩からできたホルンフェルスには時に紅柱石やキン青石の斑状変晶が見られ,その周囲や割れ目は変成温度の低下(後退変成作用)で水分などが加わり,多少なりとも白雲母に変質していることが多い。広域変成岩の片麻岩・結晶片岩中のケイ線石や藍晶石,コランダムも同様に後退変成作用で多少なりとも白雲母化していることが少なくない。



結晶片岩中の白雲母(平行ニコル)
Ms:白雲母,Di:透輝石,Ep:緑れん石,Amp:角閃石

蛇紋岩やかんらん岩に近い部分の結晶片岩には6配位のAlが少しCrに置換された緑色の白雲母(クロム雲母)が含まれることがある。平行ニコルで明瞭な緑色で,緑→青緑の多色性がある。※緑泥石より色鮮やかで,干渉色も高い。